スタートアップのプロトタイプ開発では、「何のための試作か」を明確にし、量産性やユーザー体験まで早い段階から検証することが重要です。
展示用・実証用など目的に合わせて試作を使い分けることで、手戻りや開発コストを抑えながら製品化につなげやすくなります。
スタートアップにとって、最初の試作品=プロトタイプは、アイデアを形にし、投資家やパートナーへ製品の「可能性」を伝えるための重要なステップです。
一方で、限られた予算や開発期間の中で進めるハードウェア開発では、試作品の目的が曖昧なまま製作を進めたり、量産を考えずに設計したりすることで、後工程で大きな手戻りが発生することもあります。
今回は、スタートアップのプロトタイプ開発で起こりやすい失敗と、その対策について紹介します。
1.「展示用」か「実証用」か、プロトタイプの目的を明確にする
プロトタイプは「誰に見せるのか」「何を確認するのか」を最初に決め、目的に合わせて試作方法を選ぶことが重要です。
一口にプロトタイプといっても、投資家や展示会の来場者に製品コンセプトを伝えるための試作品と、技術や操作性を確認するための試作品では、求められる内容が異なります。
目的が曖昧なまま進めると、見た目を重視した結果、実際には機能を検証できなかったり、反対に実験機能ばかりを優先して、製品としての魅力が十分に伝わらなかったりすることがあります。
例えば、試作品は目的によって次のように分けられます。
・展示・プレゼン用試作:外観、質感、サイズ感、完成イメージを重視
・実証・検証用試作:機能、性能、操作性、構造などの検証を重視
すべてを1台のプロトタイプで実現しようとするのではなく、開発フェーズや確認したい内容に合わせて、モックアップや機能試作を使い分ける方法も有効です。
クロスデザインでは、開発フェーズや使用目的を整理したうえで、必要なプロトタイプやモックアップの仕様を検討しています。
2.試作段階から量産を見据えた設計を行う
3Dプリンタなどで製作できる形状が、そのまま量産できるとは限らないため、初期段階から製造方法やコストを考慮することが重要です。
スタートアップの製品開発では、3Dプリンタなどを利用して短期間でプロトタイプを製作するケースがあります。
しかし、試作品として問題なく製作できても、射出成形や板金などの量産工法へ切り替えた際、そのままの設計では製造できないことがあります。
例えば、樹脂製品では次のような項目を考慮する必要があります。
・抜き勾配
・アンダーカット
・肉厚
・パーツの分割方法
・部品点数
・組み立て方法
また、試作時には問題にならなかった部品点数も、量産時には製造費や組立工数、部品管理などのコストに影響します。
そのため、プロトタイプを作ってから量産方法を考えるのではなく、試作設計の段階から「将来どのように製造するのか」を意識しておくことが、後工程での大きな設計変更を防ぐポイントです。
クロスデザインでは、プロダクトデザインや筐体設計、試作だけでなく、その後の量産移行も想定しながら製品開発を進めています。
3.ユーザー体験をプロトタイプの段階で確認する
操作性や持ちやすさ、サイズ感などは3Dデータだけでは判断しにくいため、モックアップを使った実物検証を早い段階で行うことが有効です。
製品の外観や形状を3Dデータで確認できても、実際に人が手にしたときの感覚まですべて判断できるわけではありません。
例えば、次のような問題があります。
・ボタンが押しにくい
・操作部分に手が届きにくい
・本体が想定より大きく感じる
・持ったときのバランスが悪い
・UIの配置が分かりにくい
こうした問題は、実寸に近いモックアップを製作することで初めて分かる場合があります。
特に一般ユーザーが操作する製品では、機能だけでなく、持ちやすさや操作性、カラー、素材感なども製品評価を左右します。
そのため、開発の早い段階でモックアップを製作し、ユーザーや関係者からフィードバックを得ることが重要です。
また、実物製作前にはCGやVRを活用して、製品の外観、サイズ感、設置イメージなどを確認する方法もあります。
4.最初から完成品を目指さず、段階的にプロトタイプを作る
プロトタイプは一度で完成させるのではなく、「確認→修正→再確認」を繰り返しながら段階的に精度を高めることが重要です。
スタートアップでは、予算や開発期間が限られているため、できるだけ試作回数を減らしたいと考えるケースもあります。
しかし、十分な検証をせずに詳細設計や量産準備へ進んでしまうと、後になって問題が見つかり、結果として大きな手戻りが発生することがあります。
例えば、
CG・3Dデータで方向性を確認
↓
簡易モックアップでサイズや操作性を確認
↓
外観モデルや機能試作で詳細を確認
↓
量産を見据えた設計へ進む
といったように、確認したい内容に合わせて段階的に試作の精度を上げていく方法が有効です。
特に製品コンセプトがまだ固まっていない段階では、完成品を作ることよりも、「次の判断ができる状態を作ること」がプロトタイプの重要な役割になります。
5.プロトタイプを製品化へ進むための判断材料として活用する
プロトタイプの目的は試作品そのものを完成させることではなく、製品化に必要な課題を見つけ、次の開発フェーズへ進むための判断材料をつくることです。
スタートアップにとってプロトタイプは、投資家やパートナーへ製品の可能性を伝えるだけのものではありません。
実際に形にすることで、次のような内容を確認できます。
・製品コンセプトは伝わるか
・必要な機能を実現できるか
・ユーザーが使いやすいか
・想定した製造方法で量産できるか
・コストや部品構成に問題はないか
特にハードウェア開発では、アイデアや3Dデータだけでは分からず、実物を製作して初めて気づく課題も少なくありません。
プロトタイプを「完成品の縮小版」と考えるのではなく、製品開発の各段階で必要な判断をするための検証ツールとして活用することが重要です。
FAQ|スタートアップのプロトタイプ・試作についてよくある質問
Q1.スタートアップが最初に作るプロトタイプは、どこまで完成させる必要がありますか?
最初から完成品に近い状態にする必要はありません。製品コンセプト、外観、サイズ、操作性、機能など、その段階で確認したい目的に合わせて必要な部分を製作します。
Q2.展示用モックアップと機能試作の違いは何ですか?
展示用モックアップは外観や質感、サイズ感など完成イメージを伝えることを重視します。機能試作は、動作や性能、操作性などを実際に検証することを主な目的とします。
Q3.3Dプリンタで作った試作品をそのまま量産できますか?
必ずしもそのまま量産できるわけではありません。射出成形や板金など、量産時の製造方法に合わせて肉厚、抜き勾配、部品構成などの設計変更が必要になる場合があります。
Q4.プロトタイプを作る前にCGやVRで確認できますか?
可能です。CGやVRを活用することで、外観デザインやサイズ感、設置イメージなどを実物製作前に確認できます。その後、必要に応じてモックアップや機能試作へ進むこともできます。
Q5.製品のアイデアや仕様がまだ固まっていなくても相談できますか?
構想段階から検討できます。製品の用途やターゲット、実現したい機能、確認したい内容を整理しながら、次の検討に必要なデザインや試作方法を決めていきます。
クロスデザインでは、製品の構想段階からプロダクトデザイン、3Dデータ作成、筐体設計、モックアップ、機能試作、CG・VRなどを組み合わせ、その後の量産移行を見据えた製品開発を支援しています。
どのような進め方が良いのか、費用はどうなるか、今後の参考に話だけきいてみたいなどお客様に合わせたご提案も可能ですです。
お気軽にお問合せ下さい。
関連リンク