コラム

コラム#23:仮想で触れる、現実を超える。XRで進化する筐体デザイン

XR技術の活用による筐体デザインの進化

― 試作レス時代の設計革新 ―

製品開発において、筐体デザインは「使いやすさ」と「魅せ方」を両立させる非常に繊細な領域です。かつてはCADデータを2D図面化し、試作品を物理的に作って初めて問題点が明らかになる——そんなプロセスが常識でした。しかし今、XR(Extended Reality)技術の台頭により、設計・検証の在り方が劇的に変わりつつあります。

XRの導入は単なる視覚化にとどまらず、「デザインの質」と「スピード」を両立させる、次世代のモノづくりを可能にします。

1. 実寸・実感による操作性検証

XRの最も大きな強みは、「仮想空間上で実物大を体感できる」点にあります。筐体の大きさやスイッチの配置、パネルの角度といった細かい物理的感覚は、画面上の3Dモデルでは把握しづらい部分です。

 ●手の届く範囲の確認
 たとえば操作パネルのボタン配置。ユーザーがストレスなく手を伸ばせる範囲かどうかを、実際に仮想空間で手を動かして検証できます。

 ●死角・視認性チェック
 表示器やランプの配置が、作業者の立ち位置から死角になっていないか、明瞭に視認できるかなど、使用時のリアルな視点で検証可能です。

2. モジュール構成とメンテナンス性の向上

筐体は単体で完結するものではなく、内部に収める電子基板やケーブル、通風設計、保守のしやすさまで含めた「総合構造体」です。

 ●仮想分解で内部構造を把握
 MR(複合現実)を使えば、外観から内部モジュールまでをシームレスに確認可能。メンテナンス用の開口位置、作業員の工具の可動域なども仮想で確認できます。

 ●組立性の事前検証
 部品の挿入角度やケーブルの通り道など、組立・配線のしやすさも設計段階でシミュレーション。結果として、製造現場での“デザイン、設計と現場のズレ”を大きく減らすことができます。

3. コミュニケーションの質が変わる

筐体設計には複数部門の関与が必須です。従来は、デザインや設計担当者だけが3D CADに慣れており、営業や企画、マーケティングとの間に「情報格差」が存在していました。

 ●誰もが直感的に理解できるプレゼンツール
 XRモデルを用いれば、非エンジニアでも構造を理解しやすく、説明も不要。360度見渡せる体験は、図面やレンダリング以上に説得力を持ちます。

 ●グローバルな開発拠点との連携
 距離が離れたチームともVR空間で共同レビューが可能。メールでは伝わらない微妙なニュアンスや空間感覚も、共通認識として共有できます。

 

4. フィジカル試作レスの実現へ

最大のインパクトは、「物理試作なしで、完成形近づける」点にあります。

 ●試作回数の削減(=コスト圧縮)
 これまで複数回かかっていた試作を、仮想空間での確認で試作回数を圧縮。筐体の構造だけでなく、操作性・保守性まで網羅できれば、物理試作の役割が大きく縮小されます。

 ●検討スピードの劇的向上
 アイデアスケッチから、わずか数日でXRレビューまで持ち込むことも可能に。意思決定のスピードが、競争力そのものになる時代です。

5. 今後の展望と課題

XRの普及に伴い、筐体デザインの現場では以下のような変化が起こると予想されます。

 ●デザイナーや設計者が、XR操作スキルを備えるのが当たり前に

 ●部署横断での仮想レビュー文化の浸透

 ●ユーザーとの共創型プロトタイピングの定着(カスタマーも設計段階に参加)

ただし、XRを活用するためには「3Dデータを正確かつリアルタイムで扱える体制」と「シミュレーションに最適化された筐体設計のマインドセット」が必要不可欠です。技術導入だけでなく、組織の運用体制も進化していく必要があります。

 

筐体デザインにおけるXR技術の導入は、単なる便利ツールの追加ではなく、「筐体デザインの在り方」そのものを根本から変えるものです。これまでデザイナーや設計者だけの世界だった初期段階の検討が、リアルタイム・リアルスケールでチーム全体のものとなり、製品開発の質とスピードを同時に高めることが可能になります。“まだ形になっていないもの”を、“見て触れて議論できるもの”にする。それがXRの本質であり、筐体デザインの未来を切り拓く鍵になります。ぜひ、VRにご興味がある方はお気軽にお問合せください。会社見学でのVR体験もご用意しております。

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