プロダクトデザインや筐体設計を進める中で、
「良いデザインができた」で終わってしまっていないでしょうか。
意匠は、見た目を整えるための工程ではありません。
意匠・実用新案・契約まで含めて設計することで、はじめて“競争力を持つ資産”になります。
本コラムでは、
製品開発に投じたコストと時間を将来につなげるために、
意匠・実用新案・契約という3つの視点を組み合わせた知財設計の考え方を解説します。
1:意匠を「見た目」ではなく「設計成果」として整理する
― 自社の強みを曖昧にしないために ―
意匠を活かす最初のポイントは、
「かっこいい」「新しい」といった感覚的な評価で終わらせず、
どこに自社の独自性があるのかを明確にすることです。
・どの形状・構成に独自性があるのか
・構造や配置に、どんな工夫があるのか
・なぜその形でなければならなかったのか
これらを言語化・図式化しておくことで、
後工程の意匠登録や権利検討の精度が大きく変わります。
意匠は「見た目」だけでなく、
設計思想まで含めて整理してこそ、他社と差がつく資産になります。
2:意匠+実用新案で「守れる範囲」を広げる
― 外観と構造を分けて考える ―
意匠権だけで守れる範囲には限界があります。
特に、形状を少し変えられただけで回避されてしまうケースも少なくありません。
そこで重要になるのが、実用新案との組み合わせです。
・意匠:外観・形状の独自性を守る
・実用新案:構造・配置・使い勝手の工夫を守る
両者を切り分けて検討することで、
デザインと設計の成果を多層的に保護することが可能になります。
筐体構造や内部レイアウトに工夫がある製品ほど、
実用新案を検討することで、
見た目だけに依存しない、強い知財設計が実現できます。
3:契約で「将来の使い方」を設計する
― 後から困らないための知財整理 ―
意匠や実用新案を検討していても、
契約で整理されていなければ、実際には使えないケースがあります。
たとえば、
・権利はどこに帰属するのか
・改良・派生開発は自由にできるのか
・実績公開や二次利用は可能なのか
これらが曖昧なままだと、
量産・派生モデル・海外展開の段階でトラブルになることもあります。
契約は、制約を増やすためのものではありません。
将来の展開をスムーズにするための「知財の設計図」です。
開発初期から整理しておくことで、
後戻りや無用な交渉コストを防ぐことができます。
意匠・実用新案・契約は「セット」で考える
意匠を本当の意味で競争力に変えるには、
1.意匠を設計成果として整理する
2.実用新案と組み合わせて守れる範囲を広げる
3.契約で将来の使い方を明確にする
この3点を切り離さずに考えることが重要です。
デザインや設計は、
つくった瞬間がゴールではありません。
開発の成果を、
次の製品、次の事業へとつなげていく。
そのための第一歩が、意匠を起点とした知財設計です。
関連リンク