機械設計における「構造設計」と「機構設計」
機械設計は、大きく「構造設計」と「機構設計」の2つに分類されます。それぞれの役割や目的が異なり、設計の進め方にも違いがあります。本コラムでは、機械設計の全体像を整理しながら、特に「筐体設計」に焦点を当てて詳しく解説します。
1. 構造設計とは?
構造設計とは、主に製品の強度や耐久性、外観を決定する設計領域を指します。動きを伴わない部品や部材の配置、素材の選定、剛性・振動解析などが含まれます。以下のような要素が求められます。
・強度設計:外部からの衝撃や圧力に耐えられる構造を設計する。
・剛性設計:歪みやたわみを最小限に抑えるための構造を考慮する。
・材料選定:金属、樹脂、複合材料などから適切な素材を選ぶ。
・加工性:製造工程で効率よく生産できるように設計する。
・外観デザイン:製品の美しさやブランドイメージを考慮する。
特に産業機器や家電製品などでは、筐体(エンクロージャー)の設計が構造設計の中心的な役割を果たします。
2. 機構設計とは?
機構設計は、製品が動作するための仕組みを考える設計分野です。モータ、ギヤ、カム機構などの動きを最適化し、スムーズに動作するように設計します。
・駆動機構の設計:モータやアクチュエータの選定と配置。
・リンク機構の設計:レバーやギヤを用いた動作制御。
・動力伝達設計:ベルト、チェーン、ギヤによるエネルギー伝達。
・摩擦・摩耗対策:可動部の寿命を延ばすための工夫。
・省エネルギー設計:効率的な動作を実現するための機構設計。
これらの設計要素は、ロボットや自動車、家電製品など、動きを伴う製品の開発に不可欠です。
3. 筐体設計とは?
筐体設計とは、電子回路や機械部品を収納し、外部環境から保護する構造を設計する分野です。構造設計の一部として扱われることが多く、製品の機能や安全性を大きく左右します。
3.1 筐体設計の目的
・機械・電子部品の保護:外部の衝撃や埃、水分から内部の機器を守る。
・放熱・冷却機構の確保:電子機器の発熱を考慮し、適切な放熱設計を行う。
・操作性の向上:ユーザーインターフェースの最適化。
・デザイン性の確保:ブランドイメージを反映し、魅力的な外観を提供。
・製造コストの最適化:生産しやすく、低コストで作れるようにする。
3.2 筐体設計のポイント
・素材の選定
●樹脂(ABS、PC、PBTなど):軽量で成形しやすい。
●金属(アルミ、ステンレス、マグネシウム):強度と放熱性に優れる。
・設計プロセス
●設計仕様の決定(サイズ、耐久性、使用環境)
●3D CADを用いたモデリング
●試作・評価(強度試験、環境試験など)
●量産設計と製造工程の最適化
・組立性の向上
●ネジやスナップフィットによる組立方法の検討。
●メンテナンスしやすい構造の設計。
機械設計は「構造設計」と「機構設計」の2つに分かれ、それぞれ異なる視点で設計が進められます。特に筐体設計は、構造設計の重要な一部であり、製品の性能や耐久性、デザイン性に大きな影響を与えます。適切な素材選定や放熱設計、組立性の向上を考慮することで、より優れた製品を生み出すことができます。
本コラムでは、筐体設計を中心に説明しましたが、機械設計の全体像を理解することで、より効率的な製品開発が可能になります。
筐体設計でお困りの方、また筐体設計をご検討の方は、ぜひ、お気軽にご相談ください。
関連リンク
🌐クロスデザイン公式サイト